2024年度事業計画


自 2024年4月 1日
至 2025年3月31日

 2023年度は、コロナが5類に分類され、ほぼ完全に日常生活を取り戻しました。学会や展示会もコロナ前の盛況さを取り戻したように感じられました。しかしながら、市場は原料高騰、人手不足、さらには円安が相まって、特に食品におきましては値上げの動きが継続されております。そのような動きは病院向けの商品に起きましても例外ではなく、各企業は卸店や病院等への値上げの説明に奮闘してきました。

このような状況下で各委員会は、下記の4つの点について重点的に活動を行いました。
  ① 診療報酬改定
  ② 食品添加物の認可
  ③ 新規の特別用途食品規格作り
  ④ 広報活動

以下、上記4点について、概要を説明させていただきます。

1)診療報酬改定、特に入院時食事療養費の増額につきましては、23年6月7日に(一社)日本流動食協会、日本メディカルニュートリション協議会(以下MN協議会)、全国病院用食材卸売業協同組合(以下、全病食)の3つの団体が合同で厚労省に対しまして「入院時食事療養費の改善要望書」を提出いたしました。その結果、24年度の改訂から30円/食が増額されることとなりました。ただ、流動食単独での使用の場合につきましては据え置きでした。こういった活動は、私たち協会としては初めてのことであり、今後も継続していくために、さらなる協会の体制の強化を図っていきたいと考えております。

2)「食品添加物の認可申請」(グルコン酸銅、ビオチンの使用拡大)につきましては、23年3月にグルコン酸銅が厚労省 医薬・生活衛生局 食品基準審査課 添加物係、食品安全委員会に答申されました。その後、23年11月22日になって、ようやく食品安全委員会ワーキンググループ(座長関西大学吉田教授)が発足されました。その後、提出した概要書につきまして、食品安全委員会からの修正の指示があり、現在、対応しているところであります。
 一方、ビオチンの申請書につきましては、チェックシート2を提出し、FADCCからの回答を待っている状況です。

3)「サルコペニア用食品(仮称)」は、消費者庁と協議を行ってまいりましたが、新しい規格を作成するためには、その根拠を示す必要があり、現在、2つの学会と協議を行い、新しく作成されるガイドラインを根拠とする方向で進めております。ガイドラインの作成は、予定より遅れている状況であり、まだ、具体的には進んでいない状況です。

4) 広報活動におきましては、昨年度は特に厚労省への要望書提出のプレスリリースのための活動を行い、一部、マスコミにて取り上げていただくことができました。従来の活動に加えて、協会の活動を広く世間に知らしめるための活動を行っていきたいと思います。

 上記4点の活動は、これまで通り、特に委員長の方々および関係者には、大変なご負担をかけておりますが、その結果として得られた成果も多数ございます。紙面上ではありますが、深く感謝させていただきます。

 今年度も多くの会員の方々にご協力をいただきつつも、引き続き、専門性の高い外部の団体との連携、会員の皆様からの人財の活用を図っていく方向で考えております。さらには今年度から、空席となっておりました副会長ポストを2名体制に戻し、特に厚労省等行政との関係強化を図っていきたいと思います。今年度は大きく4つの重点活動を行います。

 一点目は、「診療報酬改定への取り組み」です。23年度は要望書の提出、入院時食事療養費の増額ということで決着いたしましたが、2024年度は、2026年度の改訂へ準備をしていきたいと思います。特に体制強化を図ったうえで戦略的に活動していきたいと考えております。

 二点目は、「食品添加物の認可申請」です。グルコン酸銅は、食品安全委員会との修正協議が終わり次第、審議が始まると思われます。また、ビオチンの申請書につきましては、FADCCの指示を受けながら、、グルコン酸銅と同様の作業になると思います。グルコン酸銅での経験を活かし、少しでも早く厚労省へステージアップできるよう努力していきます。

 三点目は、「サルコペニア用食品(仮称)」の新規格基準の策定です。規格案の科学的根拠等を得るために、サルコペニア・フレイル学会とリハビリテーション栄養学会のガイドラインの完成を待ち、その後、ヒアリングを行っていきます。時期を見て、消費者庁と改めて交渉に入りたいと思います。

また、上記重点活動以外にも「ISOコネクタの情報収集」「広報活動のさらなる進化、継続」、「新規会員の募集」などの地道な活動につきましては、会員一同の活動として、行ってまいります。

いずれの活動にも委員長および副委員長(ならびにそれに相当する人財)の2名体制でのリーダーシップのもと進めてまいります。調査、解析、官公庁との交渉、それに付随する資料の作成、他団体との連携・交渉など多くの業務が必要となってきておりますので、会員皆様のこれまで以上のご協力を引き続きお願いしたいと思います。

基本方針

(1)「栄養療法」の普及啓発を通じて、国民の健康および業界の発展に寄与する。
(2)新しい「総合栄養食品」の制度を活性化することにより、業界の発展(在宅市場規模拡大)につなげる。
(3)お客様、特に将来増えるであろう在宅医療現場の方々のための活動を推進する。
  (「サルコペニア用食品(仮称)」の規格作成、HPの継続的改訂、総合栄養食品の普及啓発活動など)
(4)「濃厚流動食」を取り巻く各種課題(ISOコネクター導入、食品添加物の認可申請、金銭的負担軽減、診療報酬の改定)の解決に努める。

各委員会報告

●制度委員会 (委員長:蓬莱伸光)
(1) 活動方針
濃厚流動食にかかわる制度上の課題を抽出し、実態に即した円滑で健全な事業活動が可能な環境整備を具体的かつ強力に推進する。
(2) 2024年度の活動テーマ
  1)「特別用途食品制度の活用に関する研究会(第11期)」への参画
    許可基準型「サルコペニア用食品」新設要望
    総合栄養食品の広告表現
    総合栄養食品制度・許可品の普及啓発
  2)栄養コネクターの国際規格に関する対応
  3)在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料に関する対応

●技術委員会 (委員長:神谷慎―)
(1)活動方針
流動食に拡大に向けた許可基準見直し、医療政策および規制導入における技術的な課題に対応する委員会
(2)2024年度の活動テーマ
  ア) 食品添加物(グルコン酸銅、ビオチン)に使用基準拡大に向けた取り組み
  イ) 相互接続防止コネクタの導入に関する情報収集の継続

●保険委員会(委員長:市川 正樹、副委員長:川嶋 啓司)
(1)活動方針
戦略目標:市場拡大、製品価値に見合う収益が挙げられる仕組みの構築
  ① 量の拡大
   ・ 医療・介護施設での栄養関連予算の増額
   ・ 入院時食事療養費の増額
   ・ 栄養療法に対する診療・介護報酬加算の獲得
   ・ 経口補助食品に対する別建ての予算補助の新設   など
  ② 面の拡大
   ・ 在宅市場への展開
   ・ 食品区分の流動食および経口補助食品に対する保険償還や税制優遇
   ・ 在宅医療に関わる医療関係者(開業医など)に対する啓発
   ・ 病者向け食品に対する保険制度の抜本的な議論   など
(2)戦略目標実現に向けて流動食協会が抱える課題
  ・ 診療報酬や保険制度など、政策提言するプロセスが確立できていない
  ・ 関係省庁のキー・パーソンに会ってもらえない
  ・ エビデンス取得(臨床効果および医療経済効果)およびガイドライン・ シェイピングの能力が無い
  ・ 政治家とのコネクションが無い
(3)2024年度の活動テーマ
  <関係強化>
   ・ 関係省庁、関連学会、関連職能団体、他の業界団体
   ・ 海外の有力な業界団体
  <政策強化>
   ・ ステークホルダーがいずれもが恩恵を受けるストーリーの構築
   ・ 海外での成功事例の研究
  <体制強化>
   ・ エビデンス創出(臨床効果および医療経済効果)、ロビーイング、ステークホルダーと戦略協議、などができる人材・組織の巻き込み
   ・ ステークホルダーから信頼される業界団体への進化

●広報委員会 (委員長:佐野 淳也 理事)
(1)活動方針
日本流動食協会の認知度の向上だけでなく、協会から発信する情報(行政通知、関連団体の動向情報等)をタイムリーに提供できる組織を構築し、行政機関や濃厚流動食品を利用している医療機関関係者に対し、当協会及び濃厚流動食品の一層の理解を促すことを目的に、ホームページ等で啓発活動を行っていく。
(2)活動テーマ
  ①ニーズに合わせたホームページの改定を実施する
  ②2024年度の濃厚流動食品事業規模を算定し、ホームページ上で情報提供する
  ③啓発活動の一環として以下の学会・研究会にて展示等を行う
   ・2月:第40回日本栄養治療学会学術集会(JSPEN2025)
    会期 2025年2月14日(金)~15日(土)
    会場 パシフィコ横浜
    (〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-2)
    テーマ:栄養治療の船出
    会 長:比企 直樹(北里大学医学部 上部消化器外科学 主任教授)
    副会長:斎藤 恵子(東京医科歯科大学病院 臨床栄養部 副部長)
  ④当協会及び濃厚流動食に関わる情報、医療業界、行政の公開情報の取得に努め、ホームページ上でタイムリーに関連情報を提供する。
   特に、医療保険・介護保険の同時改定情報を早期に掲載する。
  ⑤ 関連する行政機関、業界団体および技術委員会、制度委員会と連携を図り、重要案件の共有化を継続的に行う。
  ⑥役員専用サイトを開設する(昨年度未達事項)