2025年度事業計画


自 2025年4月1日
至 2026年3月31日

 2024年度は、市場における原料高騰、人手不足、円安による食品の高止まりなど、いずれも景気には悪影響を及ぼす外的な環境が継続しております。当然、医療業界にも外的因子は深い影を落としており、24年度の診療報酬改訂の中の入院時食事療養費において30円/食の増額が実現できました。さらに25年度4月に20円/食の増額も実施されました。とはいえ、とても十分な金額とはいえず、相変わらず給食業態では苦しい状況が続いております。
 一方、学会や展示会もコロナの影響はほとんどなくなったようには思われますが、かつての盛況さには戻っておりません。
 25年度になってからは、トランプ大統領による関税問題が大きく取り上げられ、日々、市場は混乱を極めております。また、為替につきましても円高に振れるのか?円安が維持されるのか?多くの予測困難な状況下が今後続くと言わざるを得ません。

このような状況下で各委員会は、下記の4つの点について重点的に活動を行いました。
  ① 診療報酬改定(入院時食事療養費)
  ② 食品添加物の認可
  ③ 新規の特別用途食品規格作り
  ④ 広報活動

以下、上記4点について、概要を説明させていただきます。

 

1)療報酬改定、特に入院時食事療養費の増額につきましては、24年度の改訂から30円/食が増額されることとなりました。さらに続いて、25年度の改訂において20円/食が増額されました。こういった活動は、流食協のこれまでの要望活動が寄与・貢献したと考えております。ただし、流動食単独での使用の場合につきましては据え置きでした。今後の活動につきまして、協会内でも議論を行ってきた結果、入院時食事療養費以外にも在宅患者向けのインセンティブを付与できる活動を行っていく方向で合意しました。

2)「食品添加物の認可申請」(グルコン酸銅、ビオチンの使用拡大)につきましては、25年3月25日に開催されました食品安全委員会において、初めてグルコン酸銅が議案として挙げられました。今後は数回の審議を経て、認可されると思われます。一方、ビオチンにつきましては、23年度に導入されました認可申請への新ルールにのっとって進められており、25年4月17日の書類受付により、ステージ4に進みました。今後は、概要書の細部についてのやり取りが開始されます。

3)「サルコペニア用食品(仮称)」は、消費者庁と協議を行ってまいりましたが、新しい規格を作成するためには、その根拠を示す必要があり、現在、2つの学会と協議を行い、新しく作成されるガイドラインを根拠とする方向で進めております。日本サルコぺニア・フレイル学会におけるガイドラインの作成は完了し、パブコメも終了しております。今後は、こういったガイドラインに基づいて、具体的な規格作りに入っていきます。

4) 広報活動におきましては、これまで通り地道に協会の活動を広く世間に知らしめるための活動を行っていきたいと思います。

5) 最後に、当初の活動計画には掲げておりませんでしたが、24年度には、『自主規範』を作成、発効いたしました。『自主規範』の作成は長年の懸案事項でしたが、特に今後厚労省との関係を強化していくためにも、必要であると考え、1年近い理事会での協議を通じて、合意に至り、発効に至りました。

 上記5点の活動は、これまで通り、特に委員長の方々および関係者には、大変なご負担をかけておりますが、その結果として得られた成果も多数ございます。紙面上ではありますが、深く感謝させていただきます。

 

 今年度も多くの会員の方々にご協力をいただきつつも、引き続き、専門性の高い外部の団体との連携、会員の皆様からの人材の活用を図っていく方向で考えております。特に厚労省等行政との関係強化を図っていきたいと思います。今年度は大きく4つの重点活動を行います。

 一点目は、「診療報酬改定への取り組み」です。2025年度は、2026年度の改訂へ準備をしていきたいと思います。特に体制強化を図ったうえで戦略的に活動していきたいと考えております。

 二点目は、「食品添加物の認可申請」です。グルコン酸銅は、食品安全委員会での審議が始まりましたので、認可が出ることを待つばかりです。一方、ビオチンの申請書につきましては、FADCCの指示を受けながら、、グルコン酸銅と同様の作業になると思います。グルコン酸銅での経験を活かし、少しでも早く厚労省へステージアップできるよう努力していきます。

 三点目は、「サルコペニア用食品(仮称)」の新規格基準の策定です。規格案の科学的根拠等を得るために、サルコペニア・フレイル学会とリハビリテーション栄養学会のガイドラインに基づき、改めて新しい規格作りに入る年になります。また、素案につきましては、時期を見て、消費者庁と改めて交渉に入りたいと思います。

 また、上記重点活動以外にも「ISOコネクタの情報収集」「広報活動のさらなる進化、継続」、「新規会員の募集」などの地道な活動につきましては、会員一同の活動として、行ってまいります。

 いずれの活動にも委員長および副委員長(ならびにそれに相当する人材)の2名体制でのリーダーシップのもと進めてまいります。調査、解析、官公庁との交渉、それに付随する資料の作成、他団体との連携・交渉など多くの業務が必要となってきておりますので、会員皆様のこれまで以上のご協力を引き続きお願いしたいと思います。

 

基本方針

(1)「栄養療法」の普及啓発を通じて、国民の健康および業界の発展に寄与する。
(2)新しい「総合栄養食品」の制度を活性化することにより、業界の発展(在宅市場規模大)につなげる。
(3)お客様、特に将来増えるであろう在宅医療現場の方々のための活動を推進する。
   ※「サルコペニア用食品(仮称)」の規格作成、HPの継続的改訂、総合栄養食品の普及啓発活動など
(4)「濃厚流動食」を取り巻く各種課題(ISOコネクター導入、食品添加物の認可申請、金銭的負担軽減、診療報酬の改定)の解決に努める。

 

各委員会報告

●制度委員会 (委員長:蓬莱伸光)
(1) 活動方針
濃厚流動食にかかわる制度上の課題を抽出し、実態に即した円滑で健全な事業活動が可能な環境整備を具体的かつ強力に推進する。
(2) 2025年度の活動テーマ
  ➀「特別用途食品制度の活用に関する研究会(第11期)」への参画
  ・許可基準型「サルコペニア用食品」新設要望
  ・適正広告自主基準の策定および運用推進
  ・特別用途食品申請に関する運用改善要望
  ②「自主規範」の運用を通じた健全な事業環境の醸成

●技術委員会 (委員長:神谷慎―)
(1)活動方針
流動食に拡大に向けた許可基準見直し、医療政策および規制導入における技術的な課題に対応する委員会
(2)2024年度の活動テーマ
  ①食品添加物(グルコン酸銅、ビオチン)に使用基準拡大に向けた取り組み
  ②相互接続防止コネクタの導入に関する情報収集の継続

●保険委員会(委員長:市川 正樹)
(1)戦略目標
市場拡大、製品価値に見合う収益が挙げられる仕組みの構築
  ①量の拡大
  ・医療・介護施設での栄養関連予算の増額
  ・入院時食事療養費の増額
  ・栄養療法に対する診療・介護報酬加算の獲得
  ・経口補助食品に対する別建ての予算補助の新設   など
  ②面の拡大
  ・在宅市場への展開
  ・食品区分の流動食および経口補助食品に対する保険償還や税制優遇
  ・在宅医療に関わる医療関係者(開業医など)に対する啓発
  ・病者向け食品に対する保険制度の抜本的な議論   など

(2)2025年度活動方針
  ①外部環境の変化
   <医療>
   ・原材料費や光熱費、人件費などの高騰が継続
   ・入院時食事療養費の増額(2024年:30円/食、2025年20円/食)
   ・病院経営状態の悪化(半数以上が赤字経営、経営破綻のリスク)
   ・診療報酬制度が物価や人件費の上昇に対応していない
  <政治>
   ・医療費増大の抑制(2024年度42.8兆円)
   ・高額療養費制度見直しの見送り(5,330億円の医療費削減がとん挫)
   ・物価高騰対策に対する財政出動(財源探し)
   ・少数与党による政策決定プロセスの変化
   ・参議院選挙
  ②2025年度の活動テーマ
  <関係強化>
   ・関係省庁、病院団体、関連学会、関連職能団体、他の業界団体
   ・政治家、政治団体(少数与党で様々なチャンス)
   ・KOLs
   ・海外の有力な業界団体
  <政策強化>
   ・厚労省内レクの実施(在宅における食品区分の流動食および経口補助食品に対する保険償還に向けた環境の醸成)
   ・病者用食品を用いた栄養療法への診療報酬・介護報酬加算の可能性模索(特別食加算を含む)
   ・入院時食事療養費の増額要望(継続的な全体増額、減算撤廃)
   ・海外での成功事例の研究
  <体制強化>
   ・エビデンス創出、ロビーイング、ステークホルダーと戦略協議、などができる人材・組織の巻き込み
   ・ステークホルダーから信頼される業界団体への進化

●広報委員会 (委員長:佐野 淳也)
(1)活動方針
日本流動食協会の認知度の向上だけでなく、協会から発信する情報(行政通知、関連団体の動向情報等)をタイムリーに提供できる組織を構築し、行政機関や濃厚流動食品を利用している医療機関関係者に対し、当協会及び濃厚流動食品の一層の理解を促すことを目的に、ホームページ等で啓発活動を行っていく。
(2)活動テーマ
  ①ニーズに合わせたホームページの改定を実施する。
  ②2025年度の濃厚流動食品事業規模を算定し、学会及びホームページ上で情報提供する。
  ③啓発活動の一環として以下の学会・研究会にて展示等を行う。
   大会名:第41回日本臨床栄養代謝学会 学術集会(JSPEN2026)
   会 長:鈴木 裕(学校法人 国際医療福祉大学 国際医療福祉大学病院)
   会 期:2026年2月13日(金)、14日(土)
   会 場:パシフィコ横浜ノース+会議センターと展示ホールの一部
   形 式:ハイブリット形式(現地+オンライン)
   規 模:参加者数 約10,000人
  ④当協会及び濃厚流動食に関わる情報、医療業界、行政の公開情報の取得に努め、ホームページ上でタイムリーに関連情報を提供する。
  ⑤関連する行政機関、業界団体および技術委員会、制度委員会と連携を図り、重要案件の共有化を継続的に行う。
  ⑥役員専用サイトを開設する。(昨年度未達事項)

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